ARCHIVE 01
世界
夜は、少しずつ長くなっている。
かつては当たり前に訪れていた朝が、いつからか遅れるようになった。日が沈んでから夜明けまでの時間は伸び続け、人々はそれを不思議に思いながらも、次第に受け入れて暮らすようになっている。
「最後の日没」がいつ訪れるのか、あるいはすでに訪れているのかは分かっていない。
夜が長くなっても、酒を飲む者は酒を飲み、珈琲を切らして困る者は困り、毛布をかぶって眠る者は眠る。
WORLD ARCHIVE
夜に残された用語、現象、場所、そして夜番のあいだで語り継がれる記録。
ARCHIVE 01
夜は、少しずつ長くなっている。
かつては当たり前に訪れていた朝が、いつからか遅れるようになった。日が沈んでから夜明けまでの時間は伸び続け、人々はそれを不思議に思いながらも、次第に受け入れて暮らすようになっている。
「最後の日没」がいつ訪れるのか、あるいはすでに訪れているのかは分かっていない。
夜が長くなっても、酒を飲む者は酒を飲み、珈琲を切らして困る者は困り、毛布をかぶって眠る者は眠る。
ARCHIVE 02
夜の街を巡る者たち。
夜番は、夜間の街を巡回し、人々が朝まで生き延びるための仕事を担う。
夜に触れる時間が長いため、夜番自身も一般人より夜蝕の危険に晒されやすい。
ARCHIVE 03
夜番たちが戻ってくる、古い石造りの小さな礼拝堂。
高い天井、古びた祭壇、擦り傷の残る机と長椅子。暖炉や流し台もあり、夜番たちはここで巡回の合間を過ごす。
告解室は物置として使われ、聖水盤は灰皿代わりになっている。礼拝堂だった頃の神聖さは薄れながらも、夜番たちにとっては確かな帰還場所になっている。
「暁待ち」は今では、誰かと一緒に朝を待つことそのものを指す。
ARCHIVE 04
祭壇で燃え続ける、青白い炎。
この火は長いあいだ消えたことがないと言われている。夜蝕を抑える作用があるとされ、詰所における最も重要な設備のひとつ。
永久に燃える火ではない。燃料を補給し続けなければならない。
祭壇の灯が消えたとき、「最後の日没」が訪れるという噂がある。
ARCHIVE 05
夜が、人の身体や精神へ食い込んでいく現象。
症状や進行の仕方には個人差があり、完全な原因も治療法も確立していない。
軽度の夜蝕では、身体能力や感覚が一時的に高まる場合がある。
そのため、夜に適応した夜番ほどより深く巡回へ出るようになり、さらに夜蝕が進むという循環に陥ることもある。
ARCHIVE 06
夜の中に現れる、本来存在しない街路や空間。
通い慣れた道の先が知らない場所へ続いたり、一本道を歩いているはずなのに同じ角へ戻ったりする。
ARCHIVE 07
そこに存在しないはずの音が、夜には聞こえることがある。
音の発生源を探しても、必ずしもそこに何かがあるとは限らない。
海はない。それでも波の音を聞いたという記録は残っている。
ARCHIVE 08
夜空の月は、必ずしも一つとは限らない。
複数の月を見たという報告が存在する。観測者によって数が一致しない場合もある。
月の数を数えてはいけない。
ARCHIVE 09
理由が分からなくても、守った方がいいことがある。
一つを失ったときのため。
「朝まで付き合え」と告げる。